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B型肝炎
B型肝炎の症状と経過
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起きる肝臓の病気です。HBVは感染した時期、感染したときの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの(持続感染:キャリア)とに大別されます。
持続感染になりやすいのは、出産時ないし乳幼児期の感染です。そのため、できるだけ早い時期に予防接種を受けることが重要となります。
B型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎の大きく2つに分けられます。
B型急性肝炎
感染して1か月から6か月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。中には、激しい炎症による肝不全を呈し、いわゆる劇症肝炎をおこし死に至るケースもあります。
一般的に、劇症化に至らない場合には、数週間で肝炎は極期を過ぎ、回復の経過をとります。
B型慢性肝炎
出産時ないし乳幼児期に感染すると持続感染に移行します。生後数年から十数年間は肝炎の発症はなく、感染したB型肝炎ウイルスは排除されずに患者さんの体内で共存しており、この状態を無症候性キャリアと言います。
思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、体内のB型肝炎ウイルスを異物であると認識できるようになり、白血球(リンパ球)がB型肝炎ウイルスを体内から排除しようと攻撃を始めます。この時、B型肝炎ウイルスに感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が起こり始めます。
一般的に10歳代から30歳代に一過性に強い肝炎を起こした後は、強い肝炎を発症せずそのまま一生、肝機能が安定したままの人(非活動性キャリアと言います)がおよそ80パーセントから90パーセントですが、残りの10パーセントから20パーセントの人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝がんになる人も出てきます。
感染経路
HBVの感染経路は垂直感染と水平感染に分けられます。
垂直感染
出生時の母子感染(母親の妊娠中に子宮内、産道で感染)
水平感染
- 濃密な接触(性行為など)
- 静注用麻薬の乱用
- 刺青
- ピアスの穴あけ
- 不衛生な器具による医療行為
- 出血を伴うような民間療法
感染を防ぐための注意点
常識的な社会生活を心がけていれば、日常生活の場では、B型肝炎ウイルスに感染することはほとんどないと考えられていますが、コンドームを使用しない性交渉や他人のカミソリや歯ブラシの使用、適切な消毒をしていない器具を使って刺青、ピアスの穴あけなど感染する可能性のある機会は、生涯を通じて潜んでいます。
- 乳幼児に口うつしで食べ物を与えないようにしましょう。
- 外傷、皮膚炎、鼻血、月経などで出血したときは、できるだけ自分で手当をし、血液のついたものはむき出しにならないよう包んで捨てるようにしましょう。また、他人に手当てをしてもらう場合は、手当てをする人に血液や分泌物がつかないよう注意しましょう。
- トイレの後は、流水でよく手を洗うようにしましょう。
- 歯ブラシ、ひげ剃り等の血液が付着する日用品は個人専用にし、他人に貸したり、または借りたりしないようにしましょう。
- 他の病気で病院に行ったとき、また歯科治療の際は、医療従事者への感染を予防するためにも、医師にB型肝炎であることを告げましょう。
- 性交渉で感染するため、コンドームを使用しましょう。(絶対安全というわけではありません。)
- B型肝炎ウイルスの検査で持続感染が確認された方は、パートナーには事前に説明し、パートナーがHBV未感染の場合は、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)を接種してもらうようにしましょう。
- B型肝炎ウイルスの検査で持続感染が確認された方は、献血は絶対にしないでください
参考資料(リーフレット)
日常生活の場でウイルス肝炎の伝搬を防止するためのガイドライン(厚生労働省)<外部リンク>
予防接種について
- B型肝炎ウイルスに持続感染している母親からの出産時の母子感染(垂直感染)予防対策のための免疫グロブリンと組あわせた予防接種(健康保険適応)
- 乳児の持続感染(キャリア化)を予防するための「定期予防接種」(平成28年10月1日から実施)
- 医療従事者など希望者に対する予防接種
- B型肝炎ウイルス陽性の血液による汚染事故後のB型肝炎発症予防のための免疫グロブリンと組あわせた予防接種(健康保険適応)
関連リンク
B型肝炎のQ&A(日本医師会)<外部リンク>