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海(1962年)
ある日、陽暮れに近い時刻に海岸にたたずんでいたら、にわかに天地一切が薔薇色のもやに包まれてしまった。空も海も地面ももう区別がつかない。そうして一面の薔薇色の中に、空にも海にも地にもちらちらと金色に輝くものがある。もやの動きなのだろう。物音も水の中のように遠のいてしまった。風景そのものが恍惚状態にとけてしまっている。「自分」しかないのだ。しかもそれが何か広大無辺なものに包まれていて、実に懐かしいのだ。 (作者)